やっぱり独学で!!
クラシックギターは、阿部保夫先生が「楽器の中で最もむずかしいものである。※」と断言されておりますが、その真偽(!?)は別として、独学で学ぶにはかなりハードルが高いです。
テクニックの面で非常に複雑であり、「音楽をする以前の問題・・・」と感じておられる人も多いのではないでしょうか??
ですから一番良いのは、良い先生に習うことです。
それでも諸事情のため、どうしても独学でクラギをやってみたい人向けに役立つ記事を書いていきたいと思います~。
今回は「姿勢」(またはフォーム)について、です!!
※カルカッシギター教則本(阿部保夫編著)より引用
姿勢!!
さてさて独学で進めていると、なかなか納得できないのがクラシックギターを弾く際の姿勢、ではないでしょうか??
「ギターのヘッドが高い方がいいの?」
「指板が見れるようだとダメなの?」
「左足の高さや体に対する角度は?」
「ってか、腰がいたい・・・★」
まず最初に言っておきますが、究極的な「クラシックギターを弾く際の正しい姿勢」なんてものは存在しません。
もちろん、わたしたちは一人一人違った骨格を持っているなんて当たり前の理由もありますが、
もう一つは、フェルデンクライス博士が「みんな人生(の活動)がプロセスだとはおそらく知っているけど、止まった状態での調和がプロセスには適用できないとは知らないよね※」と言っている通り、
(※The Elusive Obviousより翻訳、引用)
「正しい姿勢」はあくまで「静止状態の話」で、わたしたちの興味がある「より良い弾き方」つまり、「動きの話」とは違うってことです。

動きの連続の中で生きていることを無視して「静止画的な理想の姿勢」を追い求めると落とし穴にはまってしまいます。
求めるべきは「より良い動き」であり、そこからどんな動作にもなめらかに移行していけるニュートラルな体の姿勢が決まってくるんですね。
んで先人たちがそんな風に試行錯誤して、たどり着いた答えはこれ。

「アルハンブラ宮殿の思い出」で有名なフランシスコ・タレガ先生です。
こんな感じだとギターを弾く際、両手が色んな動きに準備なしに入っていきやすく、他の姿勢よりもたくさんの選択肢があるってなわけです。
姿勢はあくまで「その時何をしたいか=動作」ありき、です。
足台!!
さて上の写真でも確認できるように、クラシックギターは左足を上げて、その上にギターを乗せるのが伝統的な奏法です。
しかし子供からやってない人や体が硬い人にとっては最大級の関門と言ってもいいのが、この姿勢なんです!!
足台を使ってると腰が痛い!とにかく腰にくる!なんて人はたくさんいらっしゃいます。
はっきり言いまして、私は足台奏法は人間の機能にかなってないとすら思っています。
解決方法は二つ。あ、いや三つですね。
1.我慢する。
多くの方がこれを採用されてます。
事実、晩年までこの方法で弾かれた人もいるので、体が比較的柔らかい人はいけるんではないでしょうか・・・。
2.ギターレストを使う。
今は足台にかわる色々な器具、ギターレストが発明されています。
それぞれ特徴があるので、実際に使用して試してみるのが一番いいでしょう。
ある種の浮遊感は気になりますが、腰の痛みや背筋の緊張からは完全に解放されます。
わたしは全て試してみましたが、エルゴプレイを主に使っていました。今は足台を使っていますが・・・。


3.工夫する。
さて「足台は使いたいが、腰は痛い。でもあくまで足台でいきたい、いや楽に足台を使いたい!」なんてよくばりな人はちょっと勉強して工夫しましょう。
その一、
人間の骨盤は以下のようになっています。

骨盤には色々可動域があるのですが、仙腸関節と股関節が大きく動く関節です。
図を見て頂くとわかりやすいと思いますが、股関節は大転子(股関節のソケットにはまってる丸い部分)の形状から、外側(矢印の方向)に開きやすくなっています。

ですから、もしも左足を体の真っ直ぐ前に出してしまうと、実は股関節にあまり優しくないんです。
よって、足台をまっすぐ前に置いている方は、少し足を左に開いてその下に足台を移動させてみましょう!
そしてギターのボディのくぼみではなく、ボディの先っちょ(黒でなく青の矢印)を左足に乗せれば、腰が格段に楽になるのに気付かれると思います。

その二、
またもう一つ工夫してみましょう!
左足の足台にはもともと傾斜がついているものが多いと思いますが、この傾斜はかかとが高くなるように置いているでしょうか?それともつまさきが高くなるように置いているでしょうか?

なんとなくつま先が高くなるように置いていた人は、かかとが高くなるように置いてみてください!
これもフェルデンクライス・メソッドからの知識ですが、つま先を伸ばした方が骨盤は前方に転がりやすくなります。つまり座った姿勢では、背筋が伸びやすくなり、骨盤の上に背骨が真っ直ぐ乗りやすくなります。
背中が曲がり、絶えず背中の筋肉で上半身を支えなくてはならないと、自然と肩や腕、指先にも力が入りやすくなります。
上半身が出来るだけ仕事をせずに、骨格に体重を任せているように座ってみましょう。
その三、
またさらに工夫できることとして、ベルトを固く締めていたり、硬い生地のジーパンなどを履いて練習している人は、ベルトを外して、ジャージなどの柔らかいズボンに着替えてみましょう!
実はこんな単純な要素が腰痛の原因になっていることもあります。
上記の三つの工夫で、かなり腰に対する負担は軽減されたと思いますが、如何でしょうか??
その四、
それでもまだ苦しい方は最後にこれを試してみて下さい。
自分の背中と椅子の背もたれの間になにか適当な物を挟んで、後ろから支えられる状態にしてみましょう。
(もしも適当なものがない場合は、椅子の深くに座って、背もたれに直接支えさせる手もありますが、この場合は両足が固定されて動きが制限されてしまうデメリットがあります。)
もちろん人前で演奏する場合は、何かを挟むわけにはいきませんが、練習時にいつも背中を支えられていると、何週間か程度で股関節(特に左)の柔軟性が高まり、かなり楽になってくると思います。
その五、
それでもダメという方・・・
フェルデンクライス・メソッドやってください・・・。
「なぜ骨盤の角度と腰痛が関係あるのか」もあわせて、体のことをふかーく理解できます。
詳しい情報はフェルデンクライス・メソッドとは?の記事を見てくださいね。
背筋は楽に伸ばしましょう!
背筋の問題はとても大事ですが、とても単純です。
「楽に伸ばしましょう」
ですが、ここでも要注意!
人間の背筋は、図をみて頂いてもわかる通り、もともと真っ直ぐではありません。

また上の図は脊柱を横から見ていますが、正面から見ても、左右が対象の脊柱を持つ人はほとんどいません。ほとんどの人が左右にもわずかながら曲がっています。
ですが、真っ直ぐでないからこそ、安定性と流動性を同時にあわせ持てるんですね。
さて、これは感覚的なことですが、背骨一個ずつが連なっているのを出来るだけ細かく感じ、頭の重さがバランスよく骨盤に直接かかっているようにイメージしてみましょう。
ヤジロベエのように頭が骨盤の上に乗っかっているのがとてもいい状態です。
しかしこれは最初に書いた通り、止まった状態での理想ですね。
動きが伴ってくると全く話が違ってきますが、それはともかく動きの中でもこのニュートラルの姿勢をたくさん経由できると楽になります。
姿勢はたえず変わる!
最初に少し触れましたが、一番大事なことです。
姿勢は変わります。
セーハをする時、ハイポジションを弾く時、1弦を弾く時、6弦を弾く時、和音を連続で弾く時、左手を見る時、見ない時、いろいろな姿勢になります。
ですから「正しい姿勢」という想像上の観念は捨てましょう。そんなものないですよ。
肩を落として(肩から力を抜いて)出来るだけ楽に、安定して動く工夫を重ねていってみてください。きっとどんどん姿勢のバリエーションが増えていくでしょう。
これはフェルデンクライス・メソッドからですが、「動きの選択肢が増えるほど、脳はより良い選択を自然にするようになる」とわかっています。
(参考記事「正解かどうかより自由かどうか!? ~モーシェの一言2~」)
またどんなに脱力のできた姿勢でも、ずっと同じ姿勢でいれば必ず苦しくなります。
ためしに同じ姿勢でずっと寝てみてください!すぐに辛くなる筈です。
ですから、動き続けていることが大事で、動きを洗練させていくのであればタブーはありません。
ひとつに限定して、どこかに留まり続けてしまうことの方が人間の身体にとってよくないんですね。
姿勢はいろいろ変えましょう!
ギターを弾くことを楽しむ!
独学シリーズ、最初は「姿勢」についていろいろ紹介させてもらいましたが、いかがでしょうか??
いろいろ考えるのも大事ですが、楽しくなければ元も子もありません。ぜひぜひクラギを弾くことを楽しんでくださいね。
好きこそものの上手なれ、ですね!!