フェルデンクライス 10年間続けてみて思うこと


 

10年間続けて思うこと

わたくしがフェルデンクライス・メソッドやり始めてから10年が経ちました。
月日の経つのは早いなぁと思いますが、今回はこの10年で何を得たのかすこしまとめてみたいと思います。

フェルデンクライス・メソッドには興味あるけど、「ほんとうに効果あるの?」なんて人や、続けていてもあまり思うように効果を体感できない人の参考になれば嬉しいです。



どんな風に学んだか?

フェルデンクライス・メソッドに出会う前は、体を頻繁に痛めていましたし(寝違えたり、肩が凝ったり・・・)、特に楽器演奏に困難を覚えていて、2時間も練習すれば腰などに我慢できないほどの慢性的な痛みがありました。

ともかく体をなんとかしたい!という欲求は非常に強かったですし、何かよい方法がないかなぁと探してはいました。

出会い

そんな中、最初は母親の紹介で京都市内の教室で、グループレッスンを受けてみることにしました。

最初からはっきりした効果を体感できたわけではないですが、特に悪い印象はありませんでしたし、レッスン料金が10回分ほど前払いだったのもあり、とりあえず続けることができました。

数回レッスンを受けたころから、自分の身体の変化を感じることができ、「これはいい!」と感じ、まじめに1週間に1度のペースで通い始めました。

ジストニア発症

その後しばらく経って、ギターを弾く時、自分の意志とはまるで違う方向に指が動くという症状のジストニアにかかってしまいます。

実はわたしがジストニアになったのは、グループレッスンを始めたすこし後で、ジストニアを治そうとしてフェルデンクライス・メソッドを始めたのではありません。

(それまでためてしまった体のストレスが表面化したと思っています。)

第一人者からの指導

ですが、これが結果的には功を奏しました。

バイトなどはしていましたが、ギターが弾けないわけですし、毎日そんなにやることもありません。

そのタイミングで指導者養成コース(メソッドのインストラクターを養成するコース)に入ってみないかと当時の先生から言われ、ギターが弾けない間、そちらに集中してみてもいいかもしれないと思い、資格をとるべく真剣に勉強し始めたのです。

コースは、年3回、2週間の集中授業(朝9時~夕方5時)があり、学期の合間期間に自主学習を進めてくるという内容のものです。

講師が素晴らしく、世界に50人といないと言われる「Trainer」の資格を持つ人たちが教えにきてくれます。

実際にそのような先生たちに教えてもらえることで、メソッドの恩恵を以前より遥かに大きく受け取ることができました。

ですから、最初1年半は毎週1回グループレッスンを受けるだけ、その後4年間はかなり集中してメソッドを勉強しました。

実践しながらの試行錯誤

指導者養成コースを卒業してからは、京都でグループレッスン教室を毎週開いています。

曲がりなりにもプロとして活動するわけですから、中途半端なことを教えられません。

実際、最初の頃は教室運営も鳴かず飛ばずで、新しく生徒が増えてもなかなか長続きしないことが多く、つねに教室の存亡の危機と戦っていました!

しかし、フェルデンクライス・メソッドを実際に役立てるために、自分のジストニア治療に応用したり、楽器のテクニックや、スポーツに活かす具体案を考えながら、レッスンを提供していくと少しずつ人が集まるようになってくれました。

つまり、卒業してから現在に至るまで、いかにフェルデンクライス・メソッドを実際の生活に役立てるかをずっと考えていて、この試行錯誤が今のわたしの財産になっています。

どれくらい効果あるの?

とてつもなくあります!!

運動機能というものは、人生のほとんど全てに関係がありますから、全ての面で効果が期待できます。

なぜなら、(フェルデンクライス博士本人の言葉を借りると)

  • 骨格の形やそれぞれの関係性について気付きが与えられ、
  • 緊張しすぎている筋肉から力が抜けてバランスが取れ、
  • 何をするにも努力感が減り、
  • どのような動作においても単純に動けるようになり、
  • 感受性を高め、正常な状態から少しでもずれたら気付けるようになり、
  • 空間認知能力が高まり、
  • 知識の使い方が多様になり、
  • 労苦が減るので仕事量や耐久力を向上させ、
  • 姿勢や呼吸が改善するので、肉体を若返らせ、
  • 健康になり運動能力が向上し、
  • 何をするにもコーディネーションが良くなり、
  • 肉体的にも精神的にも学習能力が高まり、
  • より自分に深く気付くことができる

からです!

フェルデンクライス博士が主張する効果をリストアップしてみましたが、10年たった今「確かにそうだったな」とうなずけます。

効果について、私自身の言葉ではこちらの記事で説明しています。

より効果を出すために!

上記のように高い効果が期待できるメソッドですが、ちょっと注意が必要です。

何年も続けてみて感じたのですが、最初のうちはわけわからずとも素直に先生の指示を聞いて、そのまま動けば驚くほどの効果が出ます。

特に体になんらかの問題を抱えている人ほど顕著で、首が曲がらなかったのが曲がるようになったり、腰痛がその場でなくなったりなんてのはザラです。

しかしさらに続けていくと、多くの人は効果の体感が少なくなり、すこしマンネリ化するみたいです。

わたしもそうでした。

そんなマンネリを克服して、高い効果を出すためのヒントを以下に書いておきます。

マンネリ打破の方策1 ~短い期間に連続してレッスンを受ける~

指導者養成コースに入り、いきなり2週間連続でグループレッスンを朝から晩まで受け続けたので、それまでのマンネリ感は吹き飛んでしまいました。

呼吸は楽になり、歩行が早くなり、楽に動けるようになって、楽器の音も変わりました。

ですから今まさに停滞感がある人は、グループレッスンを一気に連続して受けてみることをお勧めします。

体が変化して、元の習慣に戻る前にさらに変化するので、とても効果が体感しやすいのです。

マンネリ打破の方策2 ~良い先生に習う~

指導者養成コースで教えるTrainer達が素晴らしく、かれらに直に習うことでほんとうに考え方や体が変わりました。

フェルデンクライス・メソッドはまだまだ日本では発展途上ですし、日本人の「Trainer」はまだ一人もいません。

(Teacher → Practitioner → Assistant Trainer → Trainerの順に資格の難易度があがります。)

良い指導者に習うのは、効果を体感するのにとても大事です!

マンネリ打破の方策3 ~個人レッスンを受ける~

それから個人レッスンを受けるのもお勧めです!

わたしは何度かFI(個人レッスン)を受けたおかげで、自分の気付いていない癖や動き方、問題点などがとても鮮明にわかりました。

グループレッスンよりはすこし値段が高くなりますが、ぜひFIレッスンを受けてみることをお勧めします。

マンネリ打破の方策4 ~モーシェの著作を読む~

そして、わたしのフェルデンクライス・メソッドに対する理解を最も助けてくれたのが、モーシェの原著を読んだことでした!

幸い英語ができたので、全ての原著をアメリカから取り寄せて読みました。

それまではボヤっとした理解が急速に明確になっていくのを感じました。(難しい英語を読むのには苦労しましたが…。)

英語はちょっと・・・という方も、

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以上の三冊は安井武先生が日本語に翻訳して下さっています。

ぜひ手に取って読んでみて下さいね。

なお、英語が大丈夫な方は、モーシェ最後の著作「The Elusive Obvious」を強くお勧め致します。

この本のおかげで、わたしは感動するほどフェルデンクライス・メソッドに納得できました。

by Moshe Feldenkrais
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フェルデンクライス・メソッドは、脳に「気付かす」ことを目的としています。

ですから、注意をはらい、自分が何に気付いていないか、もっと何に気付くことができるかアンテナをはっていると大きな効果を体験できます。

この「気付き」の感覚はレッスンを続けていれば、必ず何度も体験できます。

さらにその感覚を研ぎ澄ましていって、体の色々な部分に注意をはらっていくと、とても奥深い世界まで入っていけます。

効果がなかったこと!

最初は効果があるかなぁと思っていましたが、10年間やってみて、どうもメソッドに期待できないものもわかってきました。

1.健康になる?

体が動かしやすくなると、確かに間接的に健康状態を良くするかもしれません。しかし、私は特段体が強くなった実感はありません。最近、風邪はひきませんが、特にメソッドのおかげではないような…。

2.やせる?

確かに足やお腹に不必要についていた筋肉は落ちました。結果、足の形が変わり、けっこうスマートな形になりましたが、お腹は筋肉が贅肉に変わったような・・・。

単に運動不足だからかも知れませんが、別に顕著に痩せたりはしなさそうです。

モーシェもまるまると太っていましたし、確実に痩せるとは言い難いみたいです。

3.精神的に成長する?

これを言われる方も多いのですが、わたし自身はあまり感じていません。

メソッドでの気付きがきっかけにはなっても、人格が成長するかどうかは本人次第です。

プライベートレッスンでカウンセリングのようなことをされるプラクティショナ―も多いのですが、私自身はそれに懐疑的です。

4.楽器(専門技能)が上手くなる?

確かにフェルデンクライス・メソッドを始めると、楽器が弾きやすくなりました。

ギターでは音が大きくなったり、ウォームアップが必要なくなったり(起きぬけでも問題なく指が動く)、器用になりテクニックの練習に時間を割かなくてよくなったりしました。

またピアノでは練習もしていないのに、指が速くまわるようになりました。

それまで感じていたさまざまな限界がなくなり、まるで新たに才能を付与してもらったかのような感触がありました。

しかし、それだけではジストニアは完治しませんでした。

わたしはフェルデンクライス・メソッドのレッスンを原理原則から理解して、楽器練習に実際的、具体的な応用をし始めてから、ジストニアが完治し、急激にテクニックも進歩するようになりました。

ですから、ただただ何も考えずにレッスンを受け続けていても、ある程度で伸び悩んでしまうかも知れません。

5.若返る?

若返りはしないようです。

後ろから見たら30代の方も、正面から見れば70代ってわかります・・・。

ただ、背後から見ると70代が30代に見えるのは全く大げさな話ではありません!顔を見ないとは言え、これはそれなりにすごいことではないでしょうか?

運動能力に関しても、私が知る限り、トレーナーの方はお年をめされていても全く問題ない人ばかりです。

やってみようかなと思う人に

10年間続けてみて、やはり良いものであることは間違いありません。

人によっては、やり始めた直後に一時的な好転反応が出たりしますが、だいたい一過性のもので、その後に大きな解放につながっていく筈です。

(わたしの場合、腰まわりの筋肉が緩んだ感覚体験をした後から一か月ほど、お腹がとてもゆるくなってしまった経験があります。あれは大変でした・・・。ですが結果、ギターで足台を使える程、腰回りの柔軟性が高まりました。)

もちろん理想はプライベートレッスンやグループレッスンを頻繁に受けることです。

色々な事情でそれができない人は、何回かグループレッスンを受け、やり方をある程度理解した後は、ネットや書籍などを頼りに自分でやってみてもいいと思います。

見ていると、持って生まれた才能が大きすぎて、このような身体法が全く必要ないという方もおられるようです。

しかし、そうでない人も問題に気付いた時に取り組み始めれば、一生、体の動かし方については悩む必要がなくなります。

ぜひぜひお勧めなフェルデンクライス・メソッドです!